小水力発電で低炭素社会づくり

ENGINEER’S VOICE Vol.9

小水力発電で低炭素社会づくり

初期コストの抑制と売電収益の最大化

独立収支確保のためのモデルを開発
小水力導入促進を図る。

農業用水路未利用落差の開発
今回の業務内容と課題は?

常西用水土地改良区様が管理されておられる筏川・横内用水路において、小規模な小水力発電設備の設計、施工管理業務に担当技術者として従事しました。
小水力発電設備を計画するためには、調査・設計費、電気設備費、土木建設費、用地費等を要するため、小規模な発電設備では事業成立はこれまで困難でありました。
同規模の水車・発電機の需要が少ないため、機器を扱う企業も少ない、従って技術開発が進まず、水車価格が下がらない状況です。
今回の業務で対象とする農業用水路は、落差・流量が小規模で、かんがい期と非かんがい期の水量変化が大きい等、発電事業を行う上では非常に困難な条件下で事業採算性を確保させなければなりませんでした。

技術者としての思い:苦労・工夫した点

事業収支を良くするためには、コスト抑制のため、発電規模を縮小する等が考えられますが、規模縮小により売電収益も下がるため、初期コストの抑制と収益の最大化とのトレードオフを解決する必要があります。

①初期コストの抑制
発電設備は治水上の支障とならないよう、また発電設備の維持管理のために、本川とは別にバイパス水路を設け、同水路内に発電設備を計画するのが一般的ですが、小規模小水力発電施設では、機械・土木設備費用が過大となることから、水車・発電機は昇降機能を設けて本川に直接設置可能な構造とすることにより、バイパス水路を省略することを提案しました。

②売電収益の最大化

追加した昇降機能を活用し、水量の変動に対応して水車位置を最適な位置にできる構造とすることにより、水車規模の最適化を図り、最大出力を出来るだけ下げないようにしました。また水車位置と連動して可動するゲートを配置し、水量が少ないときには、ゲート高を最大とすることにより、落差を確保し、発電出力の低下を抑制しました。
上記2点の工夫により、当初想定されていた発電設備と比べて大幅コスト削減を達成することができ、売電収益が確保できたことから、事業収支の改善に大きく寄与することができました。

技術者としての思い:今後の展望について

今回の業務を通じて、用水路の小規模落差を利用した発電の場合でも事業採算性が見込めるモデルを開発することができました。扇状地を流れる用水路等の未利用落差は全国に無数に存在するため、小流量・低落差でも効率よく発電する水車等の開発により初期設備費の抑制を図ることができれば、事業採算を確保できるモデルとして全国に展開できるモデルとして全国に展開できる可能性を秘めていると考えます。

当該用水路で収益性を確保するためには、今回採用した水車形式しかないという確信がありました。実際は、試験機も無く、ゼロベースからの業務スタートであったため、所要性能達成は相当のプレッシャーでしたが、常西用水土地改良区様、製作メーカー様の御協力により、実現できたことは、非常にうれしかったですし、貴重な体験となりました。

今後の業務において、難しい課題に直面しても、本業務を思い起こし、お客様にご満足いただける成果品をお届け出来るよう、努力したいと考えます。

古野 昌吾

建設コンサルタントに従事して15年。これまで橋梁、道路付属構造物、河川・砂防施設の詳細設計、小水力発電施設の設計に従事。昭和49年九州生まれ、富山市在住。金沢大学院自然科学研究科卒。

技術情報一覧に戻る