2019年12月15日

富山型フロントローディング都市経営による企業行動の変容 その1

当社の設立40周年事業を記念して、記念本を出版しました。

その内容の一部をご紹介します。

 

富山型フロントローディング都市経営による企業行動の変容

【富山市の都市政策の市民への浸透】

地方都市の経営と企業の行動の関係性について、日頃から感じていることを述べたいと思います。
富山市はコンパクトなまちづくりとして、公共交通活性化や、中心市街地への居住誘導、そして中心市街地活性化策など様々な施策を実施していることは、皆さんご存知の通りであり、全国的にも地方都市活性化の先進的な事例として取り上げられています。私は平成15年4月より兵庫県西宮市より富山市に移住しましたが、実はその際に初めてこのコンパクトシティ政策というものを知りました。その当時、この政策に対し、市民や企業の反応は現在のものと比較すると、静かなものであったことを覚えています。しかしながら、何度も何度も行政の施策説明を聞き、そして幾度の市政選挙による政策説明、さらには経済界での行政側からの講演等を経て、今ではほとんどの市民にこの政策が浸透していると言っても過言ではないであろうと感じています。

 

【数値では見えない効果がある】

一方で、中心市街地の居住人口や人々の通行量の変化量の数値を取り上げて、この政策は思ったような成果を上げていない、といった疑問を唱える声もあります。ここからは私見でありますが、そもそもこの人口減少社会の日本における地方都市で、居住人口の増加や公共交通利用者数が、劇的に、目に見えるように変化することは、どんな政策を実施しても難しいことであろうと考えています。政策の実施により、数値が緩やかに変化する程度でも、その政策は成功と言えるのではないかと。そのような意味で、富山市のこの政策による成果は目覚ましいものがあり、30年以上前の富山市を知っている私から見れば、かなり劇的な変化が、インフラだけでなく数値にも現れています。すなわち、従来型の政策を実施してきた場合に比べ、相当に持ち直しているということであります。

 

【都市の質を高める先端技術を活用した政策】

ではどうしてこのような変化が生まれたのか、やはりこのような変化は土木を含めたインフラが生み出したと考えています。高度な都市計画と高質なインフラ整備により、この市域に住み、また活動する企業の行動変容が起こったということであります。LRTの整備がされたから、新幹線が開業したから、中心市街地に商業施設ができたから.....など様々な要因があるが、これらすべては周到に計画された「土木のちから」とも言えるのでは?ということであります。

すなわち、私が考える富山型都市経営とは、インフラ整備における先端技術を計画段階から集中投入したフロントローディング型都市経営です。フロントローディングとは、前段階「フロント」で負荷をかける「ローディング」ということで、製品開発や設計でいうと、初期段階で品質を綿密につくりこむという意味に使われます。すなわち、富山型都市経営とは、計画・設計段階でしっかりと予算を使い、また高質な先端技術を活用してきたということです。例えばLRTの整備に関しては欧州の先進地事例を幾度も訪れその様を勉強し、かつ国土交通省も含めた日本の最先端の計画技術を投入しています。中心市街地活性化については、これも欧州型のまちづくり、すなわちまちの中心部には必ず広場があり賑わい拠点があることを事例とし、これを研究し、さらには日本、北陸の気候特性に合わせてガラス屋根付きの広場という発展形に収めています。中心市街地の美術館は、日本建築家の最高峰のお一人、隈研吾氏のデザインを採用し、かつ地方都市では珍しい駐車場をなくした設計としています。これらすべてに日本や世界の先端技術が計画・設計段階で集中的に採用されています。このようなことを表して富山型フロントローディング都市経営と考えています。そして、このようなフロントローディング型都市経営によるインフラ整備により様々な効果が生まれました。公共交通の利用者数の飛躍的な増加や中心市街地への転入人口の増加、交通サービス地域での人口増加、駅や中心市街地への民間を中心とする再開発事業への投資、などであります。

図 富山型都市経営による意識の変容

図 富山型都市経営による意識の変容

 

 

プロフィール

市森友明 (技術士 建設部門・総合技術監理部門)

株式会社新日本コンサルタント代表取締役社長。京都大学工学部卒業後、大手ゼネコン勤務を経て、2003年に入社。技術部長などを経て2006年7月から現職を務める。