2019年8月22日

富山のアイデンティティ醸成に必要な、幻の「まちなかスタジアム構想」その3

【無駄な投資とは言えないスタジアム建設】

さて、ここまで細々とお金のことを述べてきました。このような比較はある意味行政予算を執行するお立場からは無意味に思えるかもしれませんし、比較対象として適切ではないかもしれません。ただ、0.数%の年間税収や年間予算の公費負担があれば、まちなかにスタジアムを建設できることは、非常にお得感があると思うのです。なぜ公費負担なのか?近年はインフラに民間資金を活用するPPP・PFIという制度が流行っており、公費投入は極力最小限にという論調になっています。そこに逆行するような話かもしれませんが、そもそもPPPやPFIにしても結果として元々採算性が無い施設は、どんな制度を活用しても公費負担が入るものです。お金の流れでいうとそれを今払うか、キャップで払うか、あとで払うかだけの違いです。中心市街地における公に資する施設を導入した複合スタジアムであり、まちの誇りになり、市民のアイデンティティをうみだし、公共交通利用を促進し、中心市街地のお店を潤し、県外からのサポーターをとやまに呼び寄せ、一部の宿泊利用や観光収入にもつなげられる施設に、一定程度の税金の投入は非常に妥当性が高いものと言えるでしょう。実際にヨーロッパの都市はそのようにしていますし、北九州や吹田でもスタジアムは完成しました。また広島や長崎、秋田などでも同様のスキームで構想が進んでいます。とやまにできないことはないのです。

 

【地方創生の一つの装置として】

地方創生という言葉がありますが、この創生という状態の一つには、地方にお金がまわる仕組みができることだと考えています。実際に経済界でもそのような話をよく耳にします。そういう意味では地域プロスポーツは大きな装置の一つです。特にサッカーはファン層が厚く、集客力が高いスポーツであります。それをコンパクトシティー政策や中心市街地活性化と連携させて、スポーツ観戦という魅力と専用複合型スタジアムというインフラを加えたまちづくりをして、よりお金がまわる仕組みをつくろうということなのです。

経済同友会活動を通じて、北九州のまちなかスタジアム構想に色々とご関係のあった北九州大学の南教授にお話を聞く機会がありました。先生のお話の要点は次の通りでした。

地方都市再生のためには、駅及び中心市街地の魅了を高める必要があります。それはより多くの若者をこの地に呼び寄せる、または引き留めるためにも大切です。若年人口の流出を少しでも抑制するためには、例えば地元で働き、楽しみ、「夢の実現」ができることであったり、大都市よりも誇れるものがあること、例えば優れた自然環境や生活環境、そして地元への愛着などです。また地元にいながら、大都市部の機能や、様々な人に気軽に接する(交流を持つ)ことができることや、一旦他で暮らしていても「戻ってきたい」と思われることだと思います。まちなかスタジアムの整備や地元のプロサッカーチームを育成し、まちのシンボルとしていくことは、そのような魅力を実現する一つの要素に間違いなくなりうるということではないでしょうか。

 

【土木、インフラのちからで地域の魅力を】

このように、プロスポーツを活用したまちづくりを通じ、県民・市民に夢と感動、そして子供に元気と目標、まちに誇りと賑わいを与えることができるのではないでしょうか。また、短・中期的に人口定着効果や社会的つながり・協働の深化につながれば、人口減少時代に耐えうる地域経済・地域社会の形成(の一要素)につながると考えます。現在様々なまちづくり施策が行われています。それにはハード整備もあれば、ソフト施策もあります。でもやはり大切なのはインフラです。上質なインフラがあってこそ、まちは繁栄するのです。新幹線、LRT、環水公園、美術館、様々なインフラが整備されてきたこのとやまであるからこそ、そこに県民・市民が心から一体となれる地域プロスポーツの応援と上質で立地特性に優れる舞台を加えることで、先人たちが築いてきた様々なインフラが点から線になるような気がするのです。是非ともスタジアム構想は、今後のとやまを担う人たちの手で、あきらめずに推進していただきたいと思います。

プロフィール

市森友明 (技術士 建設部門・総合技術監理部門)

株式会社新日本コンサルタント代表取締役社長。京都大学工学部卒業後、大手ゼネコン勤務を経て、2003年に入社。技術部長などを経て2006年7月から現職を務める。