2019年8月10日

富山のアイデンティティ醸成に必要な、幻の「まちなかスタジアム構想」その2

【複合機能と地域のアイデンティティ醸成】

 まちづくりの装置としてのスタジアム、当然試合が行われる日はスタジアムとしての機能を果たしますが、試合が無い日はどうなのか?というと、まちの機能がスタジアムにあるのです。レストランや会議室、図書館やショッピングセンター、ホテル、老人ホームまで。要はスタジアムは一つの建物、インフラですから、立地特性次第でどのような用途にもできる訳です。実際にヨーロッパのスタジアムはそのような機能があり、まちのシンボルとしての役割を果たしているのです。欧州の都市には必ず人々が集う広場がまちの中心にあります。まるでスタジアムがその機能を果たしている、ということです。そして人々がスタジアムを、またそこでゲームを行う地域のプロサッカーチームを誇りに思い、そしてその誇りに思う共有感が地域のアイデンティティの一つになっているのです。日本でいうと、広島カープのような存在でしょうか。

コンセプトは県民・市民のアイデンティティの醸成

コンセプトは県民・市民のアイデンティティの醸成

 

【建設費用と経済効果】

 そして、2年間の委員会活動を通じて、スタジアム構想をまとめ上げました。より具体性を出すために場所も富山市の中心部の都市公園を想定しました(これがまずかったかもしれませんが…)。まちの中心部なので、コンベンション機能や飲食施設の機能、また郷土博物館等観光客対応ができる施設も加えて。事業費は北陸の気候特性を加味し、可動式の屋根を付けて、125~155億円程度(地代含まず)と試算しました。観客動員数は当時の実績の4000人に対し、倍増の8000人としました。これには根拠があり、郊外から中心部にスタジアムを移動したケースで観客数が倍になったという事例があったからであります。経済効果は直接効果(サッカー関連から効果9.3億円/年・関連イベントからの効果6.1億円/年)と間接効果(7.6億円/年)を合わせて概算で年間約23億円と試算しました。

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【建設費の負担額は行政予算を考えると決して高くはない】

 さて、事業費の捻出については提言書の中では詳しく書いていませんが、例えばスタジアムの件建設費を130億円とします。私の構想では、30億円は前例もありますので、サッカーくじからの助成金を活用します。民間の寄付金もしくは建設主体への出資金でなんとか30億円を集めると。残りが公費で70億円となります。なんだ、税金を70億円も使うのか?というご意見もあると思いますが、理由は後ほど述べたいと思います。

 さて、ここからは本当に私見ですが、公費70億円の負担を国30億円、県30億円、市10億円とします。国は、近年スポーツ施設を中心市街地につくり、複合施設とした場合に補助率を上げるとしています。詳細な補助率は、その施設がどのような用途になるのかで決まるようですが、ここでは公費負担の約43%の30億円とします。そして県と市の単独費用が30億円と10億円です。県と市はこのお金を30年起債で調達するとして、長期金利を1%とすると、県は1.3億円/年、市は0.4億円/年程度の負担となります。次にスタジアムの運営費用ですが、どこまでをスタジアム運営会社が担当するかにもよりますが、調査した事例をもとに年間3億円とします。スタジアム運営による収入はせいぜい1.5億円程度と思われますので、残りの1.5億円を公費負担とし、便宜上県を1.0億円、市を0.5億円とします。これにより、県の年間負担額は2.3億円(建設費1.3+運営費1.0)、市の年間負担額は0.9億円(建設費0.4+運営費0.5)となります。ここでもまた税金を投入するのかと思われそうですが、建設費用と同様後ほど理由を述べたいと思います。

 さて、この県2.3億円、市0.9億円の年間負担額はどの程度のものなのか。まずは税収と年間負担額の関係でみてみます。県税収入は2018年度法人2税(事業税と県民税)で1,406億円の収入があり、スタジアムの年間負担額2.3億円は税収の0.16%となります(ちなみに2018年度の県税収は8.2%増加したそうです)。県の起債残高と建設費の関係でみてみます。県債残高は2019年度で1兆1989億円となる見込みです。スタジアムの建設負担費用30億円は0.3%を占めることになります。予算規模と年間負担額の関係をみてみると、県の2019年予算規模は5,548億円となり、スタジアム年間負担費用2.3億円は0.04%、企業局を含めた予算は9,059億円となり0.02%の割合ということになります。市税と市の起債残高、予算規模とスタジアムの負担費用の関係を見ても、そう大きくは変わらない結果となるはずです。

(その3に続く)

プロフィール

市森友明 (技術士 建設部門・総合技術監理部門)

株式会社新日本コンサルタント代表取締役社長。京都大学工学部卒業後、大手ゼネコン勤務を経て、2003年に入社。技術部長などを経て2006年7月から現職を務める。