2019年8月1日

富山のアイデンティティ醸成に必要な、幻の「まちなかスタジアム構想」その1

【仲間の一言で始まった構想】

まちなかスタジアム構想を皆さんご存知でありますか?私が富山経済同友会の委員長を務めた際に、メンバーでまとめ上げた構想であります。現在ではほぼ幻となっている構想であり、時効?ということで、この紙面をお借りしてその構想について述べたいと思います。きっかけは、カターレ富山(当時J2のプロサッカーチーム)の試合を同友会として観戦したことにさかのぼります。経済団体としては是非とも地域のプロスポーツを応援しようという方針で、私の前の委員長の羽根さんの意向で行われた行事であります。会場は郊外にある富山県総合運動公園陸上競技場。スポーツで盛り上がった後は、やはり観戦したメンバーでお酒でもということだが、何せ郊外に位置しているため、近くにお店もないし、当然皆さん車で来場しているため、お酒が飲めません。メンバーの一人が「まちなかにスタジアムがあったらいいのにね」と発言したことがきっかけで、翌年私が委員長になった時の委員会活動はまちなかスタジアム構想の立案となってしまいました。経済人として、郊外のスタジアムで観戦して感じた課題は次の通りです。

・車で行くのでお酒が飲めない。

・陸上競技場と併用グラウンドなので、ピッチとスタンドの距離が大きく迫力に欠ける。

当時カターレ富山は4000人程度のお客さんを集客していました。ガンバ大阪戦は10000人が集まったそうです。このように数千人単位の集客があるイベントを郊外で実施することは非常に勿体ないと思ってしまう訳です。しかもこんなに集客できるスポーツは地方ではサッカー以外にありません。何とかしたいと。次にサッカーの試合は特に地方においては国体開催時に整備されたスタジアムで行われる場合が多く、その場合、陸上トラックと併設会場となっています。確かにスタジアムの稼働率を考えると合理的な判断なのですが、サッカーの迫力が半減してしまいます。特にサッカーは観客が盛り上げるスポーツですし、ピッチの選手との一体感が見る側にとってたまらなく魅力的なスポーツです。だから本当は陸上トラックの無い専用スタジアムが良いわけです。

 

【スタジアムはまちづくり】

このようなことから、色々と調査を始めると、ヨーロッパの都市はスタジアムがまちの中心にあることわかってきました。そこで、プレミアリーグの試合を観戦するために、ロンドンに視察に行きました。エミレーツスタジアム、アップトンパーク、スタンフォードブリッジの3か所を視察、アップトンパークでは実際に試合を観戦しました。そしてだんだんと気付いていたのです。ふとした発言がきっかけで始めた「まちなかスタジアム構想」、観戦後の飲食があれば、観客も増えるし、まちも潤うという程度の考えで。そうなんです、それは「スタジアムはまちづくりそのもの」である、ということです。ヨーロッパのスタジアムは最初からまちの機能の一つとして、場合によっては中心的な機能を果たすように整備されていること、人々がスタジアムを誇りに思い、そこでプレーする地域のチームを自然に応援するようになっていること、さらにはそのことが地域のアイデンティティに繋がっていること等。決してサッカーチームを応援するためだけではなく、折角あるプロスポーツという地域資源を活用し、スタジアムという媒体を通じてまちづくり、地域活性化につなげる・・・・。メンバー一人のつぶやき、「祝勝会が・・・」から始まった構想が実はこれからの地域経済・社会にとってとても重要な構想なのだということに私は気づいていったのです。

アップトンパークスタジアムでの観戦風景(スタジアムとピッチの距離に注目)

アップトンパークスタジアムでの観戦風景(スタジアムとピッチの距離に注目)

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観客はほぼすべて公共交通で

観客はほぼすべて公共交通で

 

 

(その2に続く)

プロフィール

市森友明 (技術士 建設部門・総合技術監理部門)

株式会社新日本コンサルタント代表取締役社長。京都大学工学部卒業後、大手ゼネコン勤務を経て、2003年に入社。技術部長などを経て2006年7月から現職を務める。