NiX JAPAN株式会社 NiX JAPAN株式会社

2013年7月24日

コンサルタント企業にとっての成長戦略・研究開発

下の写真は先日東京で開催されたXバンドレーダー研究報告会の模様です。水環境部門の若手のホープ森田君がポスター発表を行いました。彼はたまたま金沢大学時代にXバンドレーダーに関する研究を実施しており、現在共同研究者の神戸大学大石教授のレクチャーを受けながら進めています。
各社の研究報告内容を見ても、この分野の研究は各社未だにどんぐりの背比べですね・・・。弊社のような地域企業にもまだまだ可能性はありそうです。森田君、頑張りましょう!笑。

o0800045012620775551 (1) o0800045012620775549o0800045012620775548

そんなXバンドレーダー研究は弊社の研究開発事業であり、かっこよく言えば巷に流行りの成長戦略です。参議院選挙も終わり大手マスコミ各社はやれアベノミクスが信任されたが、3本目の矢の成長戦略の成功が今後のカギを握るとか言われているやつです(正確には多少異なりますが。しかし財政規律の遵守や歳出削減から逃げるな(ようは公共事業をするなということ)といった、薄っぺらい記事も再びたくさん並ぶようになりましたね・・・)。これからの日本経済、この3本目の矢の成長戦略にかかっているそうです(私はそうは思っていませんが・・・笑)。経団連や企業各社はこの政府の成長戦略に大いに期待しています(規制緩和に期待しているといったことでしょうか・・・)。

さて、またまた話は変わりますが、我々中小企業の成長戦略は如何に。企業の収益はほとんど本業からの収益です。一般的には2割のコアビジネスから利益の8割を得ているといわれています。つまり、残り8割からは利益の2割しか得ていないことになり、極論すると8割の事業は捨ててよいことになります・・・???。
では2割の高収益事業だけで企業は成り立つのでしょうか??、成り立ちません。2割の高収益事業を高収益にするために、8割の低収益事業が支えている、もしくは次の高収益事業への準備を行っているわけです。
これを弊社に置き換えると、コア事業はもちろん建設コンサルタント事業ですが、その中でも2割とは言いませんが、3~4割の高収益事業は一般の測量設計、実施設計系、調査系のものになります。残りは基本計画や構想、その他計画系、情報系の業務になり、これらは低収益であり、場合によっては赤字事業となります。特に弊社は同業他社に比べてこの低収益事業の比率が多いかもしれません。コンサルタント各社はかなり堅実経営ですから。ただ、この比率がコンサルタント各社の今後の将来を決定付けているといっても過言ではありません。事実、実施設計系の高収益事業ばかりやっていたコンサルタントはこの数年で縮小を余儀なくされているところも多数あります(今回の補正予算で息を吹き返していますが、長続きしないでしょう・・・)。
一方で成長戦略に合致するものは、そのような低収益業務を持っているかということもありますが、やはり収益を生まない、逆に経費となる研究開発業務や先行投資業務を如何に進めているかということになるでしょう。世の中で存続している大企業は必ずこの研究・先行開発に大きな投資を行っています。ここに捨て金を打てるか、ということが企業の成長戦略(存続戦略とも言えますが)になるわけです。
建設コンサルタントはそういう面ではかなり保守的な経営を行っている業態です。
理由は二つです。一つ目は客様が行政でありますので、国の政策だけがマーケットになるからです。公共投資における国策は昔からそんなに変わりませんし、我々業界では変えようがありません。すなわち、自らマーケットを造り出せない、「受け身」にならざるを得ない業態であることは間違いないのです。
二つ目の理由は売上規模が小さいからです。ゼネコンは社員一人当り1億円の売上がありますが、コンサルタントは大手すら一人当り0.2億円程度です。材料を扱わない、物を造らないサービス企業でありますので当然そのようなことになりますが、企業の研究開発費の額は間違いなく売上に比例します。売上100億円の企業よりも売上1兆円の企業の方が当然、宣伝広告費、交際費、会議費、研究開発費などの経費がより多く捻出できるのです。かくして企業はやはり大きいことに越したことがないのです。大きいだけでは能がない、小さくても高収益であることだ!なんていうことは、単なる中小企業のオーナー経営者が私腹を肥やすために言っている戯言にすぎないのです。

そんな保守的にならざるを得ない建設コンサルタント業界ですが、これからはやはり成長戦略が今まで以上に必要な状況になってきそうです。コアビジネスの公共事業は無くなることはありませんが、その執行体制に徐々に変化が出てくるかも知れません。分野によってはゼネコンが主体になりその企業体に吸収されて仕事をすることになります。またある分野では発注者となり、コンサルタントやゼネコンなどを束ねていく立場になるかもしれません。TPPが締結されれば、外国のコンサルタントと競争することになるかもしれません。このような状況変化に対応するために、いろいろ先行投資や研究開発はより重要になってくるでしょう。

さて、我々NIXの話になりますが、我々なりにそのような状況を踏まえ、試行錯誤を繰り返し、現在Xバンドレーダーの研究や小水力発電事業への進出、メガソーラー事業への進出を目指しています。いずれも先述した先行開発事業であり、収益を生まない経費だけの事業です。当然ながら、売上と先行投資のバランスは慎重に判断しながら実施しています。Xバンドレーダー研究は3年目になりますが、一気加勢に事業を進めるのではなく、世の中の情勢を見極めながら進めています。大企業から比べるとその歩みはスローかもしれませんが、身の丈に見合った戦略なのです。
小水力や太陽光の事業もしかりです。事業者として算入するためには様々な課題を克服しなければなりません。事業者になるための規制や資金面、運営ノウハウなど多岐に渡ります。また社員にとっても設計者の立場から事業者の立場への頭の切り替えが必要です。現在過渡期にあると言えるでしょう。大事なことはこの成長戦略の歩みを止めることなく、推進することです。担当社員の皆さんとともに頑張っていきたいと思います。もちろんベースとなる本業の収益あってこそでありますので、そこが一番大切であることに変わりはありませんが・・・・。

プロフィール

市森友明 京都大学博士(経営科学)
技術士(建設部門・総合技術監理部門)

NiXグループ代表、NiX JAPAN 株式会社代表取締役社長。
京都大学工学部卒業・同大学経営管理大学院博士後期課程修了。

大手ゼネコン勤務を経て、2003年に入社。2006年7月から現職を務める。国内社会インフラの計画・設計、都市計画、小水力発電開発、およびインドネシア・シンガポール現地法人にて、再生可能エネルギー事業(水力・メガソーラー)を実施中。

Archive

2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
道路維持管理クラウドサービス「みちクラ」 道路維持管理クラウドサービス「みちクラ」